実名弱者という生き方

本名で検索されると過去の黒歴史が掘られる『実名弱者』※となるとどうなるのか。今回の2ch個人情報流出事件で自分のこの5年間の経験が少しでも役に立てればと思い久しぶりにブログを書きます。

実際、こんなエントリーを書いたらまた過去の事件を蒸し返されたりする危険があるし正直怖いですが、今回の事件は自殺を考えている人もいるくらいですから…結論を先に言いますと、自殺する必要はありません。希望を持って下さい!


自分の場合
5年ほど前にひきこもりをやってたのですが、その時にニコニコ動画に上げてた動画が実名でネット中に拡散しました。動画の内容等は長くなるので割愛しますが、野獣先輩ごとく、僕もMADの素材になるほどでした。

もう、自分の名前を検索するエゴサーチをすると、出るわ出るわ本名+動画(顔バレ)が。それを見た時は脳天に雷が落ちたような衝撃が走り、ストレスでお腹が痛くなり下痢が止まらなくなり、このことを考えるだけで食欲はなくなるわ頭痛がするわ吐き気がするわ、しまいには頭髪がパラパラと抜けはじめました。それくらいの精神的なショックを受けます。だから今回の2chの事件で自殺をほのめかすような書き込みを見ても、それが決して大げさなことではないとわかるのです。とてもとてもその痛みがわかります。

今でこそTwitter等でやらかした若者が実名弱者に陥る人も多くなって来ましたが、当時は実名弱者になってしまった人はほとんどいなかったので、まったくもって孤独な闘いでした。
多い時は300個ほど動画がネットに拡散し、自殺も考えるほど辛かったです。誰にも言えない苦しさ。ネットで実名と黒歴史が拡散すると、基本的に消えません。永久にネットの世界では残り続けます。これは就職に響くとかいうレベルじゃなく、親戚付き合いや結婚や孫の代まで響くということです。

「ネットで検索するとひいおじいちゃんの奇行が未だに出てくるwww」なんて会話が100年後されるかもしれません…。

永久に恥が消えない。この苦しみは遺伝子を自分の代で終わらせたくなる衝動に駆られるほどでした。昔なら切腹。今なら自殺。

ネットで赤の他人を面白半分で特定する人には、このことをよーく知ってもらいたい。特定した人は、どれほどの痛みと苦しみを人に与えたのか、自覚してもらいたい。面白半分で罪を背負うことになりますよ。


それからどうなったか
当時はひっきーでしたが、この事もあり、立ち直りに時間がかかりました。もう就職は絶望…と思ってましたから。


実害
最初のほうは携帯電話に非通知の電話が来たり、動画が拡散したりとありましたが、すぐに沈静化しました。携帯は解約したら当然もうかかってこなくなりました。


他人に言われるか?
これは今回の事件の被害者に知ってもらいたいことなのですが、案外、人は自分のことを検索しないし、もし検索してたりしても言わないですね。親戚の集まりでも特に言われません。

確かに一度か二度、友人に言われたことありました。そんな時は「人をエゴサーチすることをゲスサーチって言うんだぜ」と言い返すことにしてます。

昔は恋した人の後をつけることは情熱的と言われ、特に問題なかったのですが、今ならストーカー呼ばわりですね。これを見習い、人の実名を勝手に検索することを「ゲスサーチ」呼ばわりしてやりましょう。そのうち、エゴサーチはマナー違反となる時が来るでしょう。



今回の事件の実害に備える
僕の場合はGoogleで出てきちゃいますが、流出データベースの中身はGoogleに出てきません。普通の人はググることも苦手なくらいなので、まず検索されることはないでしょう。あるとすると、会社のメアドで登録していてるなどの場合、チクリだと思います。先にログを調べておいて、誤魔化せる範囲で誤魔化して下さい。「家族が自分のカードを勝手に使って書き込んだだけ。キツく叱っておいた」とかちょっと卑怯でも仕事を守って下さい。
また個人のメアドや電話番号もSNSなどで検索可能だとチクられる可能性があります。すぐにSNSに登録してる方のメアドを変更して電話番号を削除して下さい。
今嫌がらせしてる人は暇な2ちゃんねらーだと思いますので、いずれ沈静化するでしょう。



実名弱者になった時の心構え
1)開き直る
過去のことを自分の中でどう処理するか。ああ、そんな時もあったなぁと思ってます。これもまた運命だと受け入れて、そこからいかに前向きに考えられるか挑戦中です。なにせこの問題は自分の問題だけでなく、今後時代的な問題になると思ってますから。


2)ゲスサーチする奴が悪い
相手の名前で検索して弱点を見つけようなんて人のほうが当然悪いです。例え問題があったことだとしても、本人は十分すぎるほど痛みを負ったのです。実名弱者は過去に起きたことを蒸し返されてるに過ぎません。自分を責める必要は一切ありません。
もし将来的に人に言われたら「若気の至りでした。お恥ずかしい限りで」と言うつもりです。それ以上に突っ込んでくる人はいないでしょうし、言う側としては過去のことを精算出来てないことを期待してるので、面白みのない回答をしましょう。変に誤魔化すほうが炎上の餌を与えるようなものです。


3)人間は色々な面がある
僕のように、今は爽やかな青年だと思われることもあったりすると、過去のことを知るとショックを受けるかもしれません。けど、人間は色んな面があって人間だし、そういうことがわかってる人と付き合うべきです。一種、僕の過去は多面性を理解出来る人だけを選別するリトマス試験紙のような役割になってます。


4)過去のことも受け入れる器のあるところで働ける
ひっきーだったのでどっちにしろ職につけず、実名弱者であったことが就職に関係したかどうかわからないのです。ここは参考にならなくてすみません。
でも結局働けるようになった時は、そんなこと気にするような経営者のところでは働いてません。そういう経営者のところで働いたほうが幸せだと思います。取引先の方も一々言ってくることはないですし。


5)削除出来るものは削除する
それでもそりゃ見られたくないというのが人情です。
僕はたまにニコニコ動画等であがってたら削除依頼してます。なんせ気分悪いですからね。管理人は削除する義務があるので、肖像権の侵害だとか、プライバシーの侵害だとかでメールを出すとたいてい削除してくれます。
それでも消しきれないのがネットというもの。やはり開き直りの気持ちは大切です。


6)引っ越す、名前を変える
今回の事件の場合、引っ越しをすれば大抵の人はもう自分の発言と実名が紐つけることが出来なくなるはずです。
名前を変えるのは、女性は結婚で、男性の場合は養子縁組という形で姓を変えることが出来ます。これはもちろん最終手段ですが、最後の最後、使える手です。法律は詳しくないのですが、母方の祖父と養子縁組して苗字を変えた人を知ってるので、そういった最終手段もあります。また精神的苦痛を理由に改名も可能のようです。僕も本当ににっちもさっちもいかなくなったら改名します!


7)いっそ開き直って実名でブログをやる
過去のことを検索する人はそれでも沢山居ます。そんな時に、実名のブログで過去をきちんと釈明すれば、余計なことを言わないものが日本人というものです。このブログもそのために運営しているようなものです。



最後に
今回の件で、追い詰められてる人も多いと思います。でも、大丈夫だと思います。僕はなんとかなってます。場合によってはすべてを失うかもしれません。けど、それは新しい人生のスタートだと受け入れれば、いつかきっといいことあります。死ぬことないです。結局、人間は考え方がすべてで、現実に対応した考えさえ持てればいいんです。今、僕は生きてて良かったと思ってますよ。



※実名弱者は石崎森人の造語で、本名で検索すると過去の黒歴史が出てきて、社会生活に不利益を被る、あるいはそうなると怯えている人のことを指します。

google appsでお名前.com さくらのレンタルサーバーでメールが受信出来ない、サイトが表示されない問題について

google apps独自ドメインを使ったメールアドレスを会社用に使おうと思い、お名前.comでとっていたドメインで利用登録をしたのですが、メールが受信できない、そして自社サイトに接続できないという問題に直面しました。
サーバはさくらインターネットの「さくらのレンタルサーバ」を使用しています。


MXレコードの設定が鬼門でした。

google公式の説明では

MX ASPMX.L.GOOGLE.COM (上記で設定済み) 10
MX ALT1.ASPMX.L.GOOGLE.COM. 20
MX ALT2.ASPMX.L.GOOGLE.COM. 20
MX ASPMX2.GOOGLEMAIL.COM. 30
MX ASPMX3.GOOGLEMAIL.COM. 30
MX  ASPMX4.GOOGLEMAIL.COM. 30
MX ASPMX5.GOOGLEMAIL.COM. 30

となっていますが、このように設定してもメールが受信できない、サイトが表示出来ないと不完全でした。



そこでネットで検索をして、以下の設定でようやく動きました。

例 example.jp ←独自ドメインにしてください。

.***.***.*** サーバのIPアドレスです。さくらのレンタルサーバの場合

サーバコントロールパネル→サーバの情報の表示→サーバに関する情報→* サーバに関する情報 *の情報欄でIPアドレスを確認出来ます。


example.jp NS 01.dnsv.jp
example.jp NS 02.dnsv.jp
example.jp MX alt1.aspmx.l.google.com /20
example.jp MX alt2.aspmx.l.google.com /20
example.jp MX aspmx2.l.google.com /30
example.jp MX aspmx3.l.google.com /30
example.jp MX aspmx4.l.google.com /30
example.jp MX aspmx5.l.google.com /30
example.jp TXT v=spf1 include:_spf.google.com ~all
example.jp MX aspmx.l.google.com /10
cal.example.jp CNAME ghs.google.com
docs.example.jp CNAME ghs.google.com
mail.example.jp CNAME ghs.google.com
sites.example.jp CNAME ghs.google.com
www.example.jp A ***.***.***.***
example.jp    A ***.***.***.***

途中で
example.jp MX example.jp /10
という設定を入れていたのですが、特定のアドレスからメールが受信出来ないという問題が発生したので、この項目を削除したら受信出来るようになりました。

いかんせん、初めての設定だったので戸惑いましたしたが、このメモがみなさんのお役に立てれば幸いです。

創価学会に謝りたい

以前の更新からしばらくたちました。向精神薬を抜いて、時が経った今、あのときはかなりおかしかったと思います。国から精神障害認定を受けるほどだったのに、当時はそんなに重くないだろうとなんか錯覚してました。正気に戻った今、何やってたんだ俺wみたいな感じです。

向精神薬が怖いのは、量をどんどん増やして飲むと、副作用で自分がなんの病気なのかわからなくなることです。病気の根本を治さないといけないのに、それがなんなのかが薬飲んで頭がぼーっとしてしまうせいでわからなくなる。夕方まで寝てるのに、夜眠れないとか意味不明な理由で睡眠薬を増やしたりするのです。それでも当時は自分がおかしなことをしていることい気づかなかった。恐ろしいものです。

だから当時やっていた奇行は謝りたいのです。ネットの世界では石崎森人は反創価学会だと思われてるかもしれませんが、そうではありません。自分も今は信仰をもってますし、ほかの宗教も「心のそこから信じる」という部分では共通する仲間です。心のそこから信じるという根源的な感情を表現する宗教は、当たり前に存在していいと思います。日本は人間を信じるとてもいい国ですから、宗教が毛嫌いされる理由もわかります。でも、このまま社会が複雑になれば、なんとなくでは信じれなくなるでしょう。人がもつ当たり前の感情が抑圧されたら、人は狂います。だから、疲れてる人は、いつでも「神仏信じてOK!」と言いたいです。
まず信じることから始まることは多いですからね。

だからいつか、創価学会の方とお話して、和解して握手している写真をこのブログに載せたいです。

PS
勝手に私の動画を使ったMADをあげてる人は辞めてください。私は公人でもなんでもないただの人なので多大な迷惑を被ってます。また、見つけ次第削除依頼だします。

ブログを更新すること。

久しぶりにブログを更新します。
本当は定期的に更新するのが理想なんですが、記事を書くのは時間がかかるし、勢いがないと書けないというのが現状なのです。でも、それではあかんなと思っている。

こうして記事を少しでも書いているということは他人に認められたい、自己の重要感を感じたいという気持ちで書いているのだが、それを達成するにはやはり継続することが必要。自分が今まで継続出来なかったのは、責任感を感じることに抵抗があったから。
継続しなければならない=○○しなければならい、という感覚が幼い頃から苦手で、そういう無責任な性格かもしれないけど、多分に家庭環境も要因になってはいるだろう。

抑圧的な家庭で育った。父親の足音が聞こえるだけで神経の芯まで恐怖するような家庭だった、ぐらいで説明はもういいだろう。もうあまり父の悪口は言いたくないから。

まぁそんなこんなで何事にも恐怖を感じやすい子供になってしまったが、小学生にあがったときに、自分の中で抑圧された感情が切れた。学校を適当にやることで、親や先生を困らせてやろうと思ったのだ。だから小学校2年の時はもう勉強を完全に放棄して、落第生になってた。全部がめんどうであった。先生をみて、「大人は大きな子供だ」なんて思って「勉強することは、そんな大人になるレールを歩むだけだ」とか生意気なこと考えて宿題は出さないわ、漢字ドリルや計算ドリルは三学期に一学期の分を適当にやるとか、ダメなガキであった。こうして、責任感が育たず、今に至ってしまったので、義務が今でも苦手で嫌いだ。義務って聞くだけでムズムズ不快になる。
だけどさ、もう大人にならないと。義務と聞いても怖じ気づかないように努力して克服したい。

元々対人恐怖症であった自分は、自己啓発本や他人との付き合い方マニュアルのようなものを小学生4年の頃から好んで読んでいた。今は初対面の人と話すことは苦痛ではない。努力して克服したことだから。

だから、きっと義務も努力して克服出来ると思う。そう信じるてる。

しばらく入院する必要があるので(決して病状が悪くなった訳ではなく、良くなったので処方薬を抜くために)ブログは更新出来ないが、ある種の決意表明で書いている。

書くのが好きなんだから書くぞーっというね。

浮き沈みの激しい性格だけど、沈んでいる時もやれるようになりたい。これがしばらくの目標。また、今後もどんどん色んな方面で活動したいと思ってるので、報告しますよ。

ではでは二ヶ月後に。

宇野常寛 「ゼロ年代の想像力」 感想 破壊と創造

2008年の著書「ゼロ年代の想像力」宇根常寛著を読んだ。
やっと読んだって感じだ。時間がかかってしまったのはこの本で紹介されているドラマとかを観てから読もうと思ったからだ。


この著書は希望書であり、絶望書である。


この本の概要は90年代のサブカルチャーゼロ年代サブカルチャーの質の違いを浮き彫りにして、90年代の「古い想像力」からゼロ年代の「新しい想像力」を描いている。

例えば90年代のエヴァからゼロ年代の「木更津キャッツアイ」への変化。宮台真司の言う大きな物語の消失で見失ったアイデンティティから、ポストモダン的状況に置ける島宇宙化における小さな物語の紬だしへと物語は変わっていった。

これは大きな物語がなくなったからと言って「どうせこんな世界なんてなにもない」という引きこもりから、何も物語がないぶん自由だから「こんなにも実は世界は豊かである」という発見への前進である。と著者は言ってる。と思う。


色々なところでこの本は物議を醸し出しているが、構成や分析、知識が稚拙であるという理由でたたかれてたり、レイプファンタジーという言葉でAIRなどの作品を非難しているから一部の人間に猛烈に反発をくらったりしている。だからここではあえてこの本の欠点を書く必要は無いだろう。Google先生に聞けば山のように批判の文章は出てくる。


だからここではこの本の持つ強烈な光の部分に焦点を当てたい。著者は島宇宙化した価値観のぶつかりあいがこの世界を暴力で覆うとしていると書いている。その代表的な作品の例といして、デスノートライアーゲームをあげている。これらの作品群は価値観のゲームの勝者が社会を動かしている。これを決断主義的な動員ゲーム=バトルロワイアル状態としている。


ここでいう決断主義というのは「〜である、〜でない」という供依存的アイデンティティではなく、「〜した、〜する」という自己のキャラクター化である。90年代の引きこもり的感覚では生き残れないと悟った若者はサヴァイブするために「〜した、〜する」というアイデンティティを自己の中核としていく例えば「ドラゴン桜」とかが代表である。


しかしそのような暴力が覆う世界が正しいのだろうか?著者はそれにノーを答える。無根拠な小さな物語で成立する島宇宙同士がコミュニケーションをしていくしかないのではないだろうかと言う。

大きな物語は消滅した。しかし、身近な者同士のコミュニケーション、恋愛から友情へ、家族から疑似家族へという移行が日常に存在する物語を作り出し、そこに豊かさが生まれると言うのだ。


自分は直感的にこの考察は素晴らしいと思った。自分は90年代的厭世観で生きている。しかし、それは大きな物語を与えてくれないからといって甘えているだけだり、自分で見つける努力をすればいいだけの話なのだ。これには衝撃を受けた。


だが、それには一人では成し遂げられない。多くの人のコミュニケーションの上で成り立つものなのだ。人と人とのつながりが新しい物語を生み出していく。そしてそれは素晴らしく豊かなものである!我々が忘れていたことがこの本はゼロ年代的な鋭さで突いてくる。


しかし、冒頭で言ったとおり、この本は希望の書でもありながら、絶望の書でもある。なぜならコミュニケーションに依存する新しい世界は、コミュニケーションが上手くできない人たちにとってはそれこそ疎外されるからだ。この本にはそういう人たちがどう生きていけばいけばいいのか何も書いてない。また、高度なコミュニケーションが必要になればなるほど人は疲れてしまう。本当は何もしなくても承認されるような世界が人間にとっては楽なのだ。これは著書でも触れているが、「Always三丁目の夕日」がヒットを飛ばした理由の一つにもなっている。


コミュニケーションの渦からこぼれ落ちてしまうしまう人たちはどうしたらいいのだろうか?引きこもってもそれがアイデンティティとならない世界に彼らはどうしたらいいのだろうか。この本が絶望の書でもという理由がここにある。


総合的に読んで、この本は希望が満ちあふれていると言える。最近、希望の書を読んでなかった自分にはかなり新鮮に感じた。批評本であるが、アニメとか特撮とか漫画に興味がある人には読んでも間違いではないと思う。

宇野常寛 「ゼロ年代の想像力」 感想 批評

この著書は希望書であり、絶望書である。



2008年の著書「ゼロ年代の想像力」宇根常寛著を読んだ。
やっと読んだって感じだ。時間がかかってしまったのはこの本で紹介されているドラマとかを観てから読もうと思ったからだ。


この本の概要は90年代のサブカルチャーゼロ年代サブカルチャーの質の違いを浮き彫りにして、90年代の「古い想像力」からゼロ年代の「新しい想像力」を描いている。

例えば90年代のエヴァからゼロ年代の「木更津キャッツアイ」への変化。宮台真司の言う大きな物語の消失で見失ったアイデンティティから、ポストモダン的状況に置ける島宇宙化における小さな物語の紬だしへと物語は変わっていった。

これは大きな物語がなくなったからと言って「どうせこんな世界なんてなにもない」という引きこもりから、何も物語がないぶん自由だから「こんなにも実は世界は豊かである」という発見への前進である。と著者は言ってる。と思う。


色々なところでこの本は物議を醸し出しているが、構成や分析、知識が稚拙であるという理由でたたかれてたり、レイプファンタジーという言葉でAIRなどの作品を非難しているから一部の人間に猛烈に反発をくらったりしている。だからここではあえてこの本の欠点を書く必要は無いだろう。Google先生に聞けば山のように批判の文章は出てくる。


だからここではこの本の持つ強烈な光の部分に焦点を当てたい。著者は島宇宙化した価値観のぶつかりあいがこの世界を暴力で覆うとしていると書いている。その代表的な作品の例といして、デスノートライアーゲームをあげている。これらの作品群は価値観のゲームの勝者が社会を動かしている。これを決断主義的な動員ゲーム=バトルロワイアル状態としている。


ここでいう決断主義というのは「〜である、〜でない」という供依存的アイデンティティではなく、「〜した、〜する」という自己のキャラクター化である。90年代の引きこもり的感覚では生き残れないと悟った若者はサヴァイブするために「〜した、〜する」というアイデンティティを自己の中核としていく例えば「ドラゴン桜」とかが代表である。


しかしそのような暴力が覆う世界が正しいのだろうか?著者はそれにノーを答える。無根拠な小さな物語で成立する島宇宙同士がコミュニケーションをしていくしかないのではないだろうかと言う。

大きな物語は消滅した。しかし、身近な者同士のコミュニケーション、恋愛から友情へ、家族から疑似家族へという移行が日常に存在する物語を作り出し、そこに豊かさが生まれると言うのだ。


自分は直感的にこの考察は素晴らしいと思った。自分は90年代的厭世観で生きている。しかし、それは大きな物語を与えてくれないからといって甘えているだけだり、自分で見つける努力をすればいいだけの話なのだ。これには衝撃を受けた。


だが、それには一人では成し遂げられない。多くの人のコミュニケーションの上で成り立つものなのだ。人と人とのつながりが新しい物語を生み出していく。そしてそれは素晴らしく豊かなものである!我々が忘れていたことがこの本はゼロ年代的な鋭さで突いてくる。


しかし、冒頭で言ったとおり、この本は希望の書でもありながら、絶望の書でもある。なぜならコミュニケーションに依存する新しい世界は、コミュニケーションが上手くできない人たちにとってはそれこそ疎外されるからだ。この本にはそういう人たちがどう生きていけばいけばいいのか何も書いてない。また、高度なコミュニケーションが必要になればなるほど人は疲れてしまう。本当は何もしなくても承認されるような世界が人間にとっては楽なのだ。これは著書でも触れているが、「Always三丁目の夕日」がヒットを飛ばした理由の一つにもなっている。


コミュニケーションの渦からこぼれ落ちてしまうしまう人たちはどうしたらいいのだろうか?引きこもってもそれがアイデンティティとならない世界に彼らはどうしたらいいのだろうか。この本が絶望の書でもという理由がここにある。


総合的に読んで、この本は希望が満ちあふれていると言える。最近、希望の書を読んでなかった自分にはかなり新鮮に感じた。批評本であるが、アニメとか特撮とか漫画に興味がある人には読んでも間違いではないと思う。

ゼロ年代の想像力

ゼロ年代の想像力

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映画 サマーウォーズ 感想

この映画は09年にロングランヒットを飛ばした映画で、まぁDVD化したので観たわけです。

あらすじ

主人公はちょっと弱気で人付き合いも苦手な、17才の理系少年。
高校2年の夏休み、天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は、憧れの先輩、夏希にアルバイトを頼まれる。二人が辿りついた先は、長野にある彼女の田舎。そこにいたのは総勢27人の大家族。夏希の曾祖母・栄は、室町時代から続く戦国一家・陣内家の当主であり、一族を束ねる大黒柱だ。
栄の誕生日を祝うために集った、個性豊かな「ご親戚」の面々。そこで健二は突然、夏希から「フィアンセのフリをして」と頼まれてしまう。
栄のためにと強引に頼み込まれ、数日間の滞在をすることになった健二。賑やかな親戚の面々に気圧されながら、必死に「フィアンセ」の大役を果たそうと奮闘するのだった。
そしてその夜、彼の携帯に謎の数字が連なったメールが届く。数学が得意な健二はその解読に夢中になるのだが…
翌朝、世界は大きく一変していた。健二を騙る何者かが、世界を混乱に陥れていたのだ。
「私たち一家でカタをつけるよ!」
栄の号令のもと、健二と夏希、そして陣内家の面々が、一致団結して世界の危機に立ち向かう!


あんまり長いこと解説はする気はありません。とりあえず観ろ!です。
構成、演出、アニメーション、どれも10点満点あげたい。

ストーリーがゆっくりと進む場面では美術が素晴らしく見とれるし、次どうなるんだよ!という場面ではびっくりサプライズがある。もちろん、こうなったらいいなぁという鑑賞者の願望を一秒先に先読みしているところなんか、スピルバーグの映画手法を上手くまねてるなぁという印象があった。



栄ばーさんが束ねる旧家というのは憧れるとともに、その家の特別性というのを感じた。うちも祖先は武家だけど、いわゆる下級武士であり、しかも幕末に幕府側についちゃったおかげで何も残せず、さらに自由民権運動とかやったり金山堀に朝鮮半島渡ったりとむちゃくちゃな人だったから、うちは直系だけど核家族な訳です。だからああいう大家族で親戚同士が集まるというのは憧れるとともに、異質感を感じる。
物語でも、カズマというストーリーの中心人物がいるのだけど、彼は陣内家の長男でありながらネットに引きこもる少年として描かれている。
純粋に親戚一同仲良しって訳でもない、やはり現代における複雑な人間関係、親戚関係におけるこじれた表現もこの作品には取り込まれている。
こういう部分がこの作品をただの「大家族物」で終わらせてないリアリティを持ち込んでいると感じた。

そしてこの作品は主人公の健二と夏希、そして陣内家の大家族、さらに仮想空間上の有象無象の人たち(マルチチュード)というたくさん人々の結束物語である。

現代人は人間関係がバラバラであるという孤独感を抱えている。これが一つになったらいいなという希望を持っているのであろう。だからこの作品のダイナミズムな結束に心を打たれるのではないだろうか。
だからこれはアンチセカイ系の作品だと思う。セカイ系のふりをしてセカイ系にアンチテーゼをかがけているのだ。

ラストのシーンは賛否両論あるかもしれないけど、自分は傑作だと思った。昔のジブリを感じさせる爽快さだった。なにより、栄ばーさんの笑顔がすべてを語っている。

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